花合わせ(有限会社世田企画)について。
有限会社世田企画(後の株式会社セタ・平成21年清算)が昭和57年(西暦1982年)にリリースしたアーケード花札ゲーム・花合わせについて。
アーケード用花札としては、初期にリリースされた作品の一つで、当時のアーケード花札の中では最も人気のあった作品でした。
花合わせの概要。
花合わせは、有限会社世田企画(後の株式会社セタ・平成21年に清算)が昭和57年(西暦1982年)にリリースしたアーケード花札です。
当時、既に日本物産が花ピュータをリリースし、その後チュウブキコー(後の株式会社キワコ?)が恋来をそれぞれリリースしていますが、いずれも粗いグラフィックの所為か余りぱっとしたものではありませんでした。
花合わせは、当時にしては精細なグラフィックであった事と、当時人気があったジャンピュータの花札版と言えるようなゲームシステムから、当時最も人気のある花札ゲームとなりました。
花合わせのプレイ。
花合わせはタイマ式の花札(こいこい)で、原則一人プレイでした。
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先ず、コインを投入してスタートボタンを押します。
二人プレイの場合は一局交代となります。
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ゲーム開始時の親はコンピュータ側で、プレイヤとCPUは一局交代で親を務める事となります。
- 但し、流局時の親権については、ゲーム開始時はコンピュータが、二局目以降は直前に上がった側となり、ゲームでの親子関係は先手か後手かと言う意味しかありません。
- 配札…手札と場札は八枚ずつ配られます。このときある細工がされていたりします。
- ゲームは通常の花札同様、手札から一枚を切り、合わせられる札があればそれと合わせ獲ります。
- 札を切ったら、山から一枚めくって同様に合わせられれば合わせ獲ります。このとき、同じ月で点数が異なる札が二種ある場合は、片方が点滅するので、そちらを獲るか否かをはいボタンかいいえボタンで指定します。
- 獲り札は、カス札が一箇所に纏められ、それ以外は点数順にソートされて表示されます。同じ点数では役を構成する札同士が纏められ、それ以外は獲った順に並ぶようになっておりました。
- このあと、役が出来ると該当する取り札が点滅して役の文数が表示されますので、こいこいするか否かをはいボタンかいいえボタンで決定します。
- 尚、相手が役を作った場合は、絶対にこいこいしません。その時点でプレイヤの敗けとなります。
- どちらも役が出来なかった場合は直前に上がった側の勝ちとなります(親権…六文)。
- 上がった場合、上がり点に100を掛けたタイムが加減されます。
- タイマがマイナスになった場合、ゲームオーヴァとなります。ゲームオーヴァとなった際に、持ち点に依り異なったコメントが表示されます。
- 尚、一定時間操作がない場合、警報音を出した後それでも操作がなければコンピュータが勝手に操作するようになっておりました。
花合わせのルール。
基本的なルールはこいこいと同じです。
- 配札は手八場八となります。
- 手役は一切ありません。
- こいこいしたものの、双方に新たな役が出来ずに流れた場合は、こいこい宣言時の役での勝ちとなります。
花合わせの役。
花合わせの出来役もこいこいでの標準的な出来役と殆ど同じです。
- 五光(十五文)
- 二十点札を五種とも揃えたもの。
- 四光(十文)
- 二十点札五種のうち、柳以外の四種を揃えたもの。
- 雨入り四光(八文)
- 二十点札五種のうち、柳を含めた四種を揃えたもの。
- 三光(六文)
- 二十点札のうち、柳以外の四種から三種を揃えたもの。
- 赤短(六文)
- 松のあかよろし(一月の五点札), 梅のあかよろし(二月の五点札), 及び桜のみよしの(三月の五点札)の三種を集めたもの。
- 青短(六文)
- 牡丹の青短(六月の五点札), 菊の青短(九月の五点札), 及び紅葉の青短(十月の五点札)の三種を集めたもの。
- 猪鹿蝶(五文)
- 萩に猪(七月の十点札), 紅葉に鹿(十月の十点札), 及び牡丹に蝶(六月の十点札)の三種を集めたもの。
- 種札(一文〜)
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十点札を五枚集めたもの。六枚目以降は一枚一文増し。
- 猪鹿蝶が完成した場合には、十点札六枚で種札役が成立し、以後一枚一文増しとなります。
- 短冊(一文〜)
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五点札を五枚集めたもの。六枚目以降は一枚一文増し。
- カス(一文〜)
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一点札を十枚集めたもの。十一枚目以降は一枚一文増し。
- 化札として菊に盃(九月の十点札)が採用されており、それもカス札の十枚のうちに含めます。
尚、赤青短, 花見酒及び月見酒はありません。
花合わせの配札の仕掛け。
以下の状況は、本来ならあり得る筈ですが、花合わせではそのような状況には絶対にならないように配札をします。
- 同じ月の札が三枚以上場札となる
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同じ月の札が三枚場に出ていれば、残りの一枚(ヒコ札)で全部獲れますが、そもそも場に同じ月の札を三枚出す事はありません。
また、同じ月の札が四枚とも場に出ている場合は、無条件で親の獲り分となりますが、やはり同じ月の札を四枚とも場に出す事はありません。
- プレイヤの手札が、場にある同じ月二種のいずれかと合わせられる
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例えば、場に「松のあかよろし」「松に鶴」が配られ、プレイヤの手札に「松のカス」が配られれば、それを切ってどちらと合わせるかを決めなければなりません。
ところが、花合わせでは場に二種出ている月の札をプレイヤに配る事がないため、初めからこのような状況は想定されない事となります。
- 山札からめくった札が、場に二種出ている月の札となる場合はあり、その場合には片方が点滅するのでそちらを獲るか否かを指定します。
しかし、これらについて、誰も突っ込んだ方はいませんでした。
花合わせのバグ。
花合わせには、以下のような重大なバグがあります。
- 普通のルールであれば、猪鹿蝶が完成した場合は以後種札一枚で種札役一文増し、赤短または青短なら以後短冊一枚で短冊役一文増しとなりますが、判定にバグがあるのか、いずれも六枚目で種札役または短冊役一文となります。
また、重大なバグとは言えませんが、菊に盃(九月の十点札)はカスの枚数にも加えられる化け札となっておりますが、菊に盃を加えてカス役を作った場合でも、菊に盃は役を構成する札として点滅されません。
花合わせに関する余談。
- どんなに早押ししても、必ず一定数のタイマーが減少する仕様になっておりました。
- 使用していた基盤は紫色の表示も可能で、実際菖蒲や藤などに紫が使われておりましたが、青短の色はなぜか紫ではなく青になっておりました。紫と言っても藤色に近い薄い色しか出せなかったからでしょうか。
- 競合製品はいずれも点数を算用数字で表示しておりましたが、花合わせはタイマ以外は全て和数字で表示しておりました。但し、持ち点を全部失った場合はマイナス点とせず、文数を表示しないと言う方法にしておりました。
- ゲームオーヴァ時には、通常もちじかんなし!と表示された後、点数に応じて評価がコメントされますが、持ち点を全部失ってゲームオーヴァとなると、もちてんなし!!と表示されたあとに、へたくそ!!と罵られます。
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ゲームオーヴァ時に、ゲーム中の最大持ち点が上位五位以内に入れば、番付にその点数が表示されます。
ゲーム終了時ではなく、ゲーム中の最大スコアが対象なので、番付に乗る点数を獲っていても、最後は持ち点を全部失ってゲームオーヴァとなる事態もあり得ます。
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花札の解像度はかなり高めになっており、そのため獲り札が入り切らない事が良く起こります。
採り札が入り切らない場合、重ねて端の部分だけが見えるようにしますが、その際その札の重要度に応じて見える幅を決めるようになっておりました。
このアイディアは、昭和56年(西暦1981年)頃にアマチュアプログラマ・高嶋晃さんがパソコン雑誌に投稿したPC向けグラフィック花札でも使われたものです。
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役が出来た時に流れる証城寺の狸囃子は本作が公開された昭和57年(西暦1982年)当時はまだ作曲者・中山晋平に著作権があったのですが、平成14年(西暦2002年)12月31日に中山晋平の死後五十年が経過したため著作権が失効しました。
このため、この楽曲をゲームなどに用いる事は、今日では日本音楽著作権協会に著作権料を払う事無く可能になりました。
- また、この楽曲を使って花合わせを復元する事も、旧株式会社セタの業務継承会社の承諾さえあれば可能ですが、許諾は簡単には得られないでしょうねえ…。