台湾麻雀(有限会社三木商事)について。
昭和64年(西暦1989年) 1月に日本のアーケード市場向けにリリースされた台湾麻雀について。
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以下、
- 台湾麻将と言う言葉は、一般の台湾式十六張麻雀の事を、
- 台湾麻雀と言う言葉は、今回紹介する有限会社三木商事の製品の事を、
それぞれ表すものとします。
概要。
有限会社三木商事は、昭和末期から平成初頭にかけて、日本物産株式会社のシステムを利用したと思われるアーケード脱衣麻雀を幾つもリリースしておりました。
- 実際、三木と日物両社のクレジットが併記された作品もあり、両社には何らかの関係があったと思われます。但し、有限会社三木商事は東京、日本物産株式会社は大阪にあったため、三木商事は日本物産の隠れ蓑と言う訳ではないようです。
その中で異彩を放っていたのが、昭和64年(西暦1989年) 1月にリリースされた台湾麻雀でした。
音声や表示は中国語と思われるものとなっておりましたが、実際には台湾には殆ど輸出されていなかったようです。
実際には、日本で打たれている麻雀とは全くルールの異なる台湾麻将と言う事もあり、殆ど売れなかったようです。
ルール。
台湾麻雀は台湾麻将(十六張麻将)、すなわち十六枚の手で五門子一雀頭を完成させる麻雀の二人打ち版となっております。
通常の台湾麻将と違い、一荘制ではなくベット制となっており、和了すると賭金と役の数に応じた払い戻しが行なわれます。
台湾麻将も数多くのローカルルールがあるため、有限会社三木商事が台湾麻雀に引用したルールはどのようなものか良く分かりません。
取り敢えず、台湾麻雀では以下のような実装になっておりました。
- ゲーム開始時に三つのサイコロを振り、それで開始時の門風を決めます
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実際には、台湾では一局毎にサイコロを振って門風を決めるのが主流ですが、二局目以降は門風をずらしていくだけとなっておりました。
これは、
- 一局精算制を取るベット式麻雀では、いちいちサイコロを振る演出は邪魔だと判断され、敢えて入れなかった
- 日本式の麻雀をベースとしているシステムを改装したため、一局毎にそのような演出をする処理が加えられなかった
のいずれかだと思われます。
- 花牌を八枚用いております
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配牌に入っている花牌は、本来は開局前に荘家から順に手から抜き出す事となっておりますが、台湾麻雀では第一打牌前に抜き出すようになっておりました。
また、花牌抜き出し後の補充牌での和了には槓上開花(嶺上開花)がつくのですが、台湾麻雀では付かないようです。
勿論、花牌は春夏秋冬・梅蘭菊竹が東南西北に対応しており、門風または荘風に該当する牌を取ると翻牌扱いとなります。
- ポン・吃・槓について
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台湾麻雀では、吃を咆と呼んでいるようです。
- 実際には台湾でも吃と呼ぶ場合が多いのですが。
また、暗槓は台湾麻将では一局終了まで四枚とも相手に見せず、一局終了時に初めて四枚を公開する決まりですが、日本と同様二枚だけ伏せて表示しております。
尚、コンピュータはポン・咆(吃)はしますが、槓はしません。
- 立直及び(リーチ麻雀で言うところの)ドラはありません
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ルールに依っては、第一打牌時に聴牌を宣言する天聴または地聴と呼ばれる役もあるのですが、台湾麻雀にはないようです。
尚、台湾麻雀では門風牌及び荘風牌に相当する花牌をドラ(竜)としておりました。
- 振聴はありませんが、打牌を並べて表示します
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台湾麻将には、過水と呼ばれる同巡内見逃しに関する制限が規定されておりますが、台湾麻雀にはそれも実装されていないようです。
また、台湾麻将には振聴の概念が無いため、打牌を並べずに無造作に河に放り出すのですが、却ってそのような描画は難しかったのか、日本式麻雀と同様にきちんと並べております。
- 台湾麻将の中にも、打牌の六列並べを規定しているルールがあるようですが、ローカルルールと言うより私製ルールの範疇であり、現地では殆ど相手にされておりません。
- 王牌の概念はありません
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台湾麻将では、王牌は十六枚残しとするのが一般的ですが、台湾麻雀は二人打ちのため、河が一杯(一人十八枚)になるまで摸打を行うものとしております。
- 更に言えば、本来のルールでは槓だけでなく花牌抜き出しでも王牌がずれます。
- 搶槓があります
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台湾麻将には振聴の概念が無いため、自分が打った牌でも栄和する事が可能です。
このため、二人打ちと言えども、搶槓があり得る事となりますが、実際台湾麻雀にも実装されておりました。
但し、これには幾つものバグが見受けられました。
- これは憶測ですが、台湾麻雀は日本の麻雀のシステムを拡張して実現したものの、充分なデバッグが出来なかったのではないでしょうか。
- 役・点数計算
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台湾麻将での和了役は日本で馴染みのないものがあったり、日本でお馴染みのものがなかったりしますが、台湾麻雀も一般的と思われる台湾麻将のルールを引用しているようです。
但し、独牌(嵌張・辺張・単騎)など採用していない役もあります。
また、天和・地和などもありません。台湾麻将の場合、ベースとなる点数(摸帯)はその場に依って決まるようですが、台湾麻雀では摸帯は一点となっております。
尚、台湾麻将には役縛りはありませんが、台湾麻雀でも摸帯以外に役が一切ない状態で和了する事も可能です。
コンピュータのプレイ。
コンピュータは門前のみならず、吃, ポンをする場合があります。但し槓は一切しません。
- 日本式麻雀と違い、一翻縛りの概念が無いため、晒しには余り気を使う必要がないのでしょう。
主なバグ。
搶槓に関するバグ。
台湾麻将は、日本式麻雀と違って振聴の概念が無いため、自分が打った牌でも堂々と栄和する事が出来ます。
- 但し、これとは別に、実際の台湾麻将では過水と呼ばれる同巡内見逃しに相当する制限事項があります。
このため、日本式麻雀では二人打ちだとあり得ない搶槓も、台湾麻将ではあり得る事となります。
- 国士無双の暗槓搶槓と言う例外はありますが、有限会社三木商事が利用していたと思われるシステムには国士無双の搶槓はありませんでした。
当然、台湾麻雀でもその事を考慮して搶槓の機能を実装しておりました。
- 実際にはCPUは槓はしないため、プレイヤのみが搶槓で放銃する事となります。
ところが、これについて、幾つものバグが見られたのです。
- 搶槓で和了すると、和了牌が全然違うものとなる
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例えば七万を加槓して搶槓されたら、和了牌として緑発が表示されるなどと言うバグがありました。
- 勿論、手は七万を待ちとしているものです。
- 搶槓の役が付かない
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搶槓和は、台湾麻将でも大抵一台役となっておりますが、一切役になりません。
- 代わりに、何故か嶺上開花で和了すると槍槓の役が加わると言うバグがあります。
- 暗槓でも搶槓されてしまう
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日本では国士無双に限り暗槓でも搶槓出来るルールがありますが、台湾麻将は和了手が十七枚からなるため国士無双はあり得ません。
更に言えば、台湾麻将では暗槓の場合四枚とも伏せて晒し、一局終了時に伏せた四枚を開く事となっているため、何を槓されたかは一局が終わるまで他者は知る事が出来ません。
当然、暗槓での搶槓などあり得ない事となります。
ところが、台湾麻雀では暗槓でも搶槓で放銃となる場合があります。
花牌に関するバグ。
バグなのか仕様なのかは微妙な点もありますが、花牌に関して以下の問題がありました。
- 配牌にある花牌
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配牌にある花牌は、開局前に荘家から順に手から抜き出す事となっておりますが、台湾麻雀では第一打牌時に抜き出します。
第一摸を行わずに吃・ポンした場合も、その際の打牌前に抜き出す事となります。
結果、補充牌で和了出来る形になってしまうと、結果的に吃・ポンの直後に和了を宣言した形になってしまいます。
- 花牌抜き出し後の補充牌
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花牌抜き出し後の補充牌での和了は、槓上開花(嶺上開花)となるのが正しいのですが、台湾麻雀では槓上開花にはなりません。
- 八仙過海
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八仙過海は本来八枚目の花牌を抜き出した直後の嶺上牌摸牌時に成立するものですが、台湾麻雀では花牌八枚を一人で抜いて和了した場合となっております。
更に言えば、役名が八仙過海ではなく八仙辻海となっております。
- 辻と言う字は日本で考案されたいわゆる国字で、台湾では通用しない文字です。
まぁ、この二つは実装が非常に困難なものなので、正しく実装出来ないのは仕方が無いのかも知れません。
いずれも、日本の二人打ち麻雀システムにない機能を追加しようとして巧く行かなかったものと思われます。
あとがき。
日本人が普段打っているリーチ麻雀とは全く違うルールと言う事もあって、日本では殆ど普及する事はありませんでした。
従来の麻雀キーボードが使えず、専用の台湾麻将キーボードが必要になるなど、基盤代だけでなくハードウェア代も掛かると言うのも普及しなかった理由の一つでしょう。
- 有限会社三木商事さん自身、第二作を出す事はありませんでした。
また、アダルト表現の問題などもあり、台湾へも殆ど輸出される事は無かったようです。
制作者も、個人的には台湾向けに二人打ち麻雀のフラッシュを作って見たいと思う事はありますが、台湾の方でこのサイトをご覧になっている方は殆どいないと思われますので、実現させておりません。